歯科矯正を検討している人のなかには、装置装着が目立たないということで人気があるマウスピース矯正を検討している人が増えています。
しかしマウスピース矯正は、よく知られているワイヤー矯正に比べると、治療に時間がかかるという話を聞いたことがありませんか?
この記事では、マウスピース矯正にかかる期間や通院頻度、メリットやデメリット、長引かせないようにするポイントなどを紹介します。
マウスピース矯正が気になっている人、矯正したいけど「何年かかるの?」と考えると腰が重くなってしまう人など、ぜひ最後までお読みください。
Contents
マウスピース矯正にかかる期間
マウスピース矯正は、何度か通院することになるため、治療に必要な時間がどの程度かを知ることは、計画を立てるうえでも治療に踏みだすきっかけとしても重要なことです。
まずは、マウスピース矯正がどのくらいかかるのかを見てみましょう。
マウスピース矯正が終了する平均期間
マウスピース矯正で治療が終了する平均期間は、約2ヶ月から3年程です。
平均期間に幅があるのは、マウスピース矯正の治療には奥歯を含めた全体を動かす『全体矯正』と、前歯の見た目が気になる部分だけを動かす『部分矯正』の2種類があるという理由からです。
それぞれの平均期間は、全体矯正が1~3年程度、部分矯正が2ヶ月~1年程度です。
マウスピース矯正は以下のような理由によってかかる期間が変わります。
- 治療内容
- 来院回数と頻度
- 治療後の保定期間
患者さんの歯の状態や歯の動きやすさなどで人それぞれに差が出ますが、通常の虫歯治療のように数週間で終わる治療ではないため、ある程度の期間がかかることを考慮して検討しましょう。
治療内容によって来院回数が変わる
マウスピース矯正の治療内容は大きく分けると、上述にもあるように『全体矯正』と『部分矯正』の2つがあり、来院回数はそれぞれ違います。
マウスピース矯正では、マウスピースのことを1枚・2枚と数えますが、全体矯正と部分矯正では、マウスピースを使う枚数に違いがあります。
- 全体矯正(奥歯を含めた全体を動かす治療)……30~90枚
- 部分矯正(前歯の歯並びを整える治療)……14~20枚
少しずつ歯の位置をずらしたマウスピースを、およそ1~2週間のスパンで着け変えるのはどちらの治療も同様ですが、使用する枚数が多いと来院回数も多くなるため、治療期間に差が出ます。
しかし「前歯の歯並びだけきれいにしたいから部分矯正をするつもり」と思っていても、全体矯正でなければ対応できないケースもあります。
そして、治療内容が全体矯正になるか部分矯正になるかは、歯や顎の状態を知るための検査をするなど、歯科医師の見立てがなければ判断できません。
検査は有料ですが、相談は無料でおこなっている歯科医院も多いため、マウスピース矯正を検討するときはまずは話を聞きに行ってみましょう。
治療期間中の来院頻度は2~3ヶ月に一度
治療期間中の来院頻度は、患者さんの歯の状態にもよりますが、一般的に2~3ヶ月に一度、間隔が短いところでは1ヶ月に一度程度です。
歯科矯正の治療中、歯を動かす期間のことを『動的矯正期間』といい、治療期間の長さを決める重要な期間となります。
「来院頻度を1週間に一度にすれば早く終わるのでは?」と思うかもしれませんが、歯が動くスピードは1ヶ月に1mm程度で、無理な力をかけて急いでしまうとトラブルを招きます。
反対に仕事の都合などで忙しく、2~3ヶ月に一度の通院頻度が守れない場合は、スケジュールにあった計画を立てて通院頻度を減らす対応をしてくれる場合もあります。
急な予定変更は、年に1、2回程度であれば矯正への影響も少なく済みますが、あまりにも通院頻度を守れないと、予定していた期間が長引くなど治療計画を組みなおさなくてはなりません。
通院予定が変わるときはきちんと担当医に連絡をすることが大切です。
医師に指示された来院頻度をしっかりと守ることができれば、治療期間を長引かせずに済みます。
治療後の保定期間も必要
マウスピース矯正の治療後は、元の位置に戻ろうとする歯を固定させるための『保定期間』が必要です。
保定期間は、マウスピース矯正のなかで、最も長くかかる期間となります。
動的矯正期間中に装着しているマウスピースは『アライナー』といい、一定の力をかけて少しずつ歯が移動できる設計になっていて、柔軟性があります。
移動した歯を固定するマウスピースは『リテーナー』と呼ばれ、マウスピース型ではありますが、アライナーとは役割が違うため、設計も違えば、硬さも違います。
歯が新しい場所に移動してきた直後は、歯を支えている骨(歯槽骨)がまだ柔らかいため、矯正後の場所に固定する必要があります。
保定期間は、動的矯正期間+半年、または約2~3年の期間が必要で、保定開始から1年間は、飲食以外は寝ている間もリテーナーを装着することになります。
マウスピースでできる矯正と必要期間
マウスピース矯正について、治療が可能な症例の詳細や必要期間を紹介します。
マウスピース矯正の治療可能な症例と、治療方法別に必要な期間とワイヤー矯正(表)の治療期間を比べたものは以下です。
歯の症例 | マウスピース矯正:部分矯正で対応可能な場合 | マウスピース矯正:全体矯正での対応の場合 | ワイヤー矯正:表側に装着の場合 |
上顎前突(出っ歯) | 6ヶ月〜1年程度 | 3ヶ月〜1年半程度 | 1〜2年半程度 |
叢生(乱杭歯・八重歯含む) | 6ヶ月〜1年程度 | 3ヶ月〜年半程度 | 1〜2年半程度 |
空隙歯列(すきっ歯) | 1ヶ月〜1年程度 | 1ヶ月〜1年程度 | 1ヶ月〜1年程度 |
この治療期間ののちに、保定期間があります。マウスピース矯正とワイヤー矯正の保定期間は同程度です。
どの症例に当てはまるのかは実際に検査をしてみないと正しい結果は分かりませんが、参考の一つにしてください。
上顎前突(出っ歯)
上の歯が下の歯に比べて極端に前に出ている状態の、いわゆる『出っ歯』を直す際は、出ている歯をなかに入れる矯正が行われます。
通常、上の歯は下の歯より2~3mm程出ていますが、4mm以上出ている場合、出っ歯と診断されます。
奥歯の噛み合わせが正常で、抜歯しなくても上下の前歯の傾斜や位置を調整する程度で治る軽度の場合がマウスピース矯正の治療適用範囲です。
叢生(乱杭歯・八重歯含む)
叢生は、八重歯や歯のねじれも含んで歯並びがガタガタしている状態で、歯の大きさと顎の大きさのバランスが悪いために起こります。
歯磨きがしにくいことで歯周病や虫歯になりやすく、噛み合わせが悪いため歯がバラバラにすり減るというデメリットがあります。
奥歯のずれが少ないことや歯を何本も抜かなくて済む軽度の叢生が、マウスピース矯正の適応範囲です。
空隙歯列(すきっ歯)
顎が大きく歯が小さいために、歯と歯の間に隙間が生じ、離れている状態です。
歯と歯の間に隙間があると、ものを噛み切れなかったり、しっかりと噛めずに飲み込めなかったりすることが心配されます。
原因には先天的なものと後天的なものがあり、後天的の場合は矯正治療の他に原因となる癖や生活習慣などへのアプローチも必要になります。
マウスピース矯正はすきっ歯の矯正に適しているため、軽度でない場合も適応可能です。
マウスピース矯正の終了までの流れ
マウスピース矯正の具体的な治療の流れを紹介します。
流れは大きく分けて以下です。
- 矯正前
- 矯正開始
- 矯正中
- 矯正後
それぞれがどのような内容で進んでいくのかを見ると、マウスピース矯正治療のイメージがしやすくなります。
1.矯正前
矯正治療にはいる前にさまざまな準備をする期間であり、以下のことが行われます。
- カウンセリング
- 精密検査
- シミュレーション
- 契約
- 型取り・歯周検査
- マウスピース発注
- 矯正前治療
カウンセリングでは不安に思っていることや分からないこと、希望などをしっかりと伝えましょう。
精密検査をする段階で治療方法が決まるため、大体の期間が算出できるようになります。
マウスピース発注のために型取りをしますが、最近では光学スキャナーを利用している医院もあります。
歯型を取る際にシリコンを口内に入れ固まるまで苦しい思いをするのと違い、光学スキャナーの場合は3D光学による精密なスキャニングで高精度な情報を約1~3分程度で取得し、型取りを終了します。
そしてマウスピース矯正の特長の一つであるシミュレーションでは、現在から矯正後への歯の移動する様子を、専用ソフトで見ることができます。
歯が移動していく様子を前もって確認することができるため、安心して治療に臨みましょう。
2.矯正開始
以下のことを済ませ、矯正期間に入ります。ここからは精密検査結果により確定した治療方法に則って進んでいきます。
- 最終歯周検査
- 装着レッスン
- 装着開始(マウスピース受け取り)
歯周病を患っていると、一定の力をかけ続ける歯科矯正を行うことで歯が抜けてしまうリスクがあるため、矯正を始める前に再度状態を検査し、必要であれば治療します。
マウスピースは次の定期通院までの間に装着するマウスピースを全て受け取り、まず30分程の装着レッスンを受けます。
装着は意外と簡単ではないため、安全にしっかりと効果を引き出せるよう、マウスピースの洗浄方法や保管の仕方も含めて説明・指導を受けます。
そしていよいよマウスピースの装着が始まります。
3.矯正中
1~2週間など、医師の指示した通りの期間を空けて、順番にマウスピース(アライナー)を着け替えていきます。
早めに着け替えても、噛み合わせが悪くなったり正しい歯の移動にならなかったりするため、自己判断で間隔を変えず、きちんと医師の指示に従います。
マウスピース装着は、1日に20~22時間の装着が指示されます。
歯を磨くときと食事以外をほとんど装着することで、治療期間を長引かせず予定通りに終わらせることが可能になるため、しっかり指示に従って装着しましょう。
そして、医師に指示を受けた間隔(およそ1ヶ月)を空けて一度来院し、計画通りに矯正が進んでいるかを確認します。
必要であればマウスピースの追加や計画の見直しをします(『リファインメント』といいます)。
4.矯正後
矯正が終了したら治療は完了ですが、そのあとは元の位置に戻ろうとする歯をその場にとどめるための『保定期間』に入ります。
保定期間は、治療期間+半年といわれていますが、できれば2年程度の期間を見ておきましょう。そしてこの間も通院が必要です。
しかし保定期間の頻度は治療中とは違い、最初は月1で、3ヶ月程経つと少し延びて、1年通えば半年に1回というふうに、少しずつ間隔が開いていきます。
矯正治療と同じくらい保定期間は重要です。しっかりと通って、プロの目線で随時確認してもらいましょう。
まとめ
マウスピース矯正の期間について、平均的な必要期間と、その期間が必要な根拠、マウスピース矯正で対応できる症状など、詳しく紹介しましたが、いかがでしたか?
通院頻度や症例についての平均期間など、医院によっては違いは多々ありますが、大体の参考にして頂ければと思います。
審美目的の治療が、結果的に健康にもよい影響を与えるケースもある歯科矯正。
痛い思いをせず、矯正していることが目立たない状態で続けられるとなれば、マウスピース矯正に人気があるのも無理はありません。
しかし、まずは希望している歯の状態がマウスピース矯正によって叶えられるのかを知ることが必要です。
歯科矯正は審美的な目的に重きを置かれがちですが、『しっかりと噛める嚙み合わせの獲得』により心身の健康を保つ本来の目的があります。
つぶら矯正歯科クリニックでは「患者様が私の家族であればどうするか」をつねに念頭において、安心できる矯正治療と、快適に過ごせる治療期間を心がけています。
矯正に興味がある方は、ぜひ一度つぶら矯正歯科クリニックまでご相談ください。